ニオイ
汗臭い人とそうでない人は何が違うのか。分かれ目は皮膚の細菌
済2026年8月・公式サイト調べ/毎月更新
この記事の要点
- アポクリン腺の汗は出た時点では乳白色で無臭とされ、皮膚表面の細菌が分解してにおいが生まれます。
- 腋臭症の人はアポクリン腺が大きく数も多いと日本皮膚科学会は説明しています。
- 強く気になる場合は腋臭症という疾患もあり、判断は医療機関の領域です。
健康に関する一般的な情報です。この記事に監修者はいません。痛み・持病・服薬がある場合は、開始前に医師などの専門家にご相談ください。
夏の電車の中や、運動をした後に自分のにおいが気になって、ここにたどり着いたのだと思います。周りも同じように汗をかいているのに、なぜ自分だけなのか。知りたいのは対策の一覧より先に、そこでしょう。
答えから書きます。においは、出てきた汗そのものから立ちのぼるのではなく、皮膚表面の細菌が汗の成分を分解することで生まれると、日本皮膚科学会の皮膚科Q&AもNIHのStatPearlsも説明しています。日本皮膚科学会は、腋臭症の人の特徴として、アポクリン腺が大きく・数が多く・分泌量が多いことも挙げています。
ただし、ここから先は正直に線を引きます。この記事は、あなたのにおいが何によるのかを決められません。強いにおいには腋臭症という疾患が含まれていて、それを見分けるのは医療の仕事だからです。気になる度合いが強いなら、皮膚科など医療機関で相談してください。
この記事は、学会のQ&A・医学リファレンス・査読誌の論文と、法令や公的資料をもとに書いています。編集部に医師はいないため、診断はできません。
この記事の要点
- においのもとになるのは、汗そのものよりも、皮膚表面の細菌による分解です。アポクリン腺の初期分泌は、英語の原文で “milky and odorless”(乳白色で無臭)と書かれています
- 日本皮膚科学会は「アポクリン腺の汗の中の脂肪酸が皮膚の表面の細菌によって分解され、3メチル2へキセノイン酸がにおう」と説明しています(原文ママ)
- 腋臭症の人の特徴として、アポクリン腺が大きく・数が多く・分泌量が多いことを日本皮膚科学会は挙げています
- 腋のにおいと足のにおいは、においの成分も、関与するとされる菌も違います
- 資料に予防として書かれているのは「洗浄などでいつも腋を清潔に保つ」までです。強く気になるなら医療機関へ
においは汗そのものではなく、皮膚の細菌が分解して生まれる
まず、においがどこで作られるかです。
NIHのNCBI BookshelfのStatPearlsは、アポクリン腺の初期分泌を “milky and odorless”(乳白色で無臭)と書き、皮膚表面の細菌がこれを分解することでにおいが出ると説明しています。
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aも、同じ順番で書いています。原文のまま引用します。
アポクリン腺の汗の中の脂肪酸が皮膚の表面の細菌によって分解され、3メチル2へキセノイン酸がにおう (日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「汗の病気―多汗症と無汗症―」)
この物質は学術的な表記では (E)-3-メチル-2-ヘキセン酸で、査読誌の論文(澤野 2000)でも腋臭の特有成分として挙げられています。
つまり、においが作られる場所は皮膚の表面です。2つの資料が共通して書いています。
ここで、言い過ぎないように1つ断っておきます。編集部が「無臭」と確認できたのは、アポクリン腺の初期分泌についてだけです。全身から出るエクリン腺の汗そのものが無臭だと明言した資料にはたどり着けていないため、この記事は「汗は無臭です」とは書きません。
なお、腋以外の汗のにおいについても細菌の関与は書かれています(澤野2000の抄録)。
そのうえで、対策の向きは汗を止める側ではなく皮膚の細菌を減らす側にあると編集部は読み取っています(資料が対策の優先順位として書いているわけではありません)。
汗腺は2種類あり、においの話で出てくるのは主に腋のアポクリン腺
汗を出す腺は2種類あります。エクリン腺はほぼ全身に分布し、成分は主に水です(日皮会・StatPearls)。アポクリン腺は腋窩・外陰部・外耳道・乳輪などに分布し、初期分泌は乳白色で無臭、脂肪酸を含みます(StatPearls・日皮会)。
アポクリン腺の分泌物が脂肪酸を含むことと、その脂肪酸が皮膚表面の細菌に分解されること。腋のにおいの話でこの腺の名前が出てくる理由は、どちらも日本皮膚科学会が書いています。
ここでも1つ断っておきます。汗の99%は水分だ、という説明を、この記事は書きません。StatPearlsにも発汗生理の総説(Baker & Wolfe 2020)にも割合の数字は無く、主として水・希薄な食塩水という定性的な書き方にとどまっています。広く流通している数字ですが、出所を確認できていません。
同じように汗をかいても差が出る理由として、資料は汗腺の側の違いを挙げている
ここが、この記事にたどり着いた人の引っかかりだと思います。
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、腋臭症について次のように説明しています。
- アポクリン腺が大きく、数が多く、分泌量が多い
- 優性遺伝で、親子に現れることが多い
- 白人・黒人ではほとんどの人に多少ある
頻度は原文でこう書かれています。
日本人などの黄色人種ではその頻度は約10%にすぎません (日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「汗の病気―多汗症と無汗症―」)
差の要因として資料が挙げているのは、汗を出す腺の側の違いです。腺の大きさ・数・分泌量が大きい側に振れている状態を、腋臭症という疾患として扱う書き方になっています。ただしこれは編集部の読み取りで、資料が個人差の理由を包括的に説明しているわけではありません。
ただし、この記事は読者一人ひとりに原因を割り当てません。あなたのにおいが腋臭症によるものだという意味でも、そうでないという意味でもありません。日皮会Q&Aには腺の特徴が書かれていますが、自分で確かめる方法は書かれておらず、鏡で見て分かるものでもありません。
強く気になるなら、皮膚科など医療機関で相談してください。これは記事が代われる部分ではありません。
治療については、この記事は書きません
理由は2つです。腋臭症の診療ガイドライン(「形成外科診療ガイドライン1 2021年版」第Ⅶ編)は、編集部が存在と作成学会・発行日を確認したのみで中身は読んでおらず、治療の種類や効果を書ける材料を持っていません。また医療法第6条の5第1項は「何人も」で始まり医療機関でない者も名宛人になりえるため、特定のクリニックや医師を名指しして受診を勧めることはしません。行き先を選ぶのは読者と医療者の側です。
腋のにおいと足のにおいは、においの成分も関わる菌も違う
同じ汗のにおいでも、部位によって話が変わります。澤野清仁「体臭」(日本味と匂学会誌 7(1):3-10, 2000)の抄録は、腋臭の特有成分を(E)-3-メチル-2-ヘキセン酸(関与が示唆される菌はリポフィリックジフテロイド)、汗臭・足臭の成分を酢酸・イソ吉草酸などの低級脂肪酸(関与する菌はスタフィロコッカス属)としています。腋のにおいの説明をそのまま足のにおいに当てはめると、この違いを踏み越えることになります。
編集部が読めたのは抄録だけで、2000年の論文です。それ以降に更新されたかは調べていません。
40歳以上でだけ検出された成分がある — 加齢臭は腋のにおいと機序が別
体臭の話には、もう1つ別の系統があります。
Hazeらが2001年にJ Invest Dermatolに発表した論文の抄録は、2-ノネナールという成分が “detected only in older subjects (40 y or older)”(40歳以上でのみ検出)と報告し、生成経路をω7不飽和脂肪酸の酸化分解だと結論しています。
ここで大事なのは、この話に細菌が出てこないことです。腋のにおいは細菌による分解、こちらは皮脂の酸化で機序が別です。加齢臭を細菌のせいだと書くと、この2つを取り違えることになります。澤野2000の抄録は、加齢臭と皮膚細菌叢の関係を当時未解明としています。
この論文の著者所属は資生堂(企業の研究)で、編集部が読めたのは抄録だけです。よく名指しされる「パルミトレイン酸」という物質名は抄録内で確認できず、表記は一貫して「ω7不飽和脂肪酸」でした。
資料に予防として書いてあるのは、洗浄で腋を清潔に保つことだけ
対策として皮膚科Q&Aにあるのは、次の一文です。
皮膚表面の細菌を減らすため、洗浄などでいつも腋を清潔に保つ必要があります (日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「汗の病気―多汗症と無汗症―」)
目的が「細菌を減らすため」と書かれているのが、この一文の要点で、においが細菌による分解で生まれるという説明とそのままつながっています。
一方で、具体的なやり方(何で洗うか・1日に何回か・拭き取るだけで足りるか)は書かれていません。編集部は確認できていないので、この記事には書きません。
制汗剤やボディソープの効果を、この記事が書かない理由
この記事は、製品の効果を1つも書きません。製品名も出しません。理由は2つあります。
1つは、編集部がどの製品も試しておらず、パッケージの表示も確認していないことです。
もう1つは法令です。医薬品医療機器等法(昭和35年法律第145号)第2条第2項は、医薬部外品の目的を号ごとに挙げています。その第1号イが「吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止」(原文ママ)です。
一方、化粧品が表示できる効能は、厚生労働省の通知(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)の別表第1に(1)〜(56)として並んでいます。この56項目に「体臭を防ぐ」「汗のにおいを抑える」はありません。
製品ごとに言えることはその製品の区分と表示で決まり、編集部はどの製品の表示も確認・試用していないため、効果を書ける根拠がありません。書かないのではなく、書ける材料を持っていない、というのが正確です。選ぶときは、パッケージに「医薬部外品」の文字があるかを見て、パッケージまたは公式サイトの効能・効果の記載を自分で読んでください(効能・効果は法定の表示事項ではないので、無いこともあります)。
よくある質問
汗をかいてもすぐ拭けばにおいませんか?
分かりません。拭き取りでにおいがどう変わるかを書いた資料は見つかっていません。日本皮膚科学会が予防として書いているのは、洗浄などで腋を清潔に保つことまでです。
ワキガかどうかは自分で分かりますか?
この記事では判定できません。腋臭症は疾患で、判断は医療機関の領域です。気になるなら皮膚科へ。日皮会Q&Aは、腋臭症の人はアポクリン腺が大きく数が多く分泌量が多いと説明していますが、自分で確かめる方法は書かれていません(頻度は「日本人などの黄色人種ではその頻度は約10%にすぎません」)。
制汗剤を使えばにおいは消えますか?
編集部は製品を1つも検証していないため、効果を書けません。表示できる効能は製品の区分によって法令で決まります。パッケージに「医薬部外品」の文字があるかを見て、効能・効果の記載を読んでください(法定の表示事項ではないので無いこともあります)。
足のにおいも腋と同じ原因ですか?
同じではありません。腋臭の特有成分は(E)-3-メチル-2-ヘキセン酸、汗臭・足臭は酢酸・イソ吉草酸などの低級脂肪酸で、関与する菌も違います(澤野2000の抄録)。
食べ物で体臭は変わりますか?
分かりません。食事と体臭の関係を確かめた資料を、編集部は1件も持っていないためです。出典が無いものは、推測でも書きません。
今日からできること
- においが強く気になるなら、まず皮膚科など医療機関で相談する
- 洗浄などで腋を清潔に保つ(日本皮膚科学会が予防として書いている内容です)
- 製品を選ぶときは、パッケージの「医薬部外品」の文字と、パッケージまたは公式サイトの効能・効果の記載を自分で読む(効能・効果は法定の表示事項ではないので、無いこともあります)
においの話は、口の中と体で仕組みが別です。口のにおいが気になっているなら朝の口臭の記事を用意しています。自分がどこから手をつけるべきか迷っているなら男磨き診断で全体の位置を見てから戻ってきてください(設問ににおいの項目はありません)。ほかの記事は記事の一覧にまとめています。
ここが、いまのあなたの伸びしろ。まず今日は、洗浄で腋を清潔に保つところから(日本皮膚科学会が予防として書いている内容です)。強く気になるなら、その前に医療機関へ。
出典
いずれも2026年8月9日に確認しました。
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「汗の病気―多汗症と無汗症―」Q5(監修: 横関博雄) https://qa.dermatol.or.jp/qa32/q05.html
- StatPearls “Anatomy, Skin, Sudoriferous Gland”(NCBI Bookshelf、2023年4月24日更新) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK513244/
- 澤野清仁「体臭」日本味と匂学会誌 7(1):3-10, 2000(J-STAGE。抄録のみ確認) https://www.jstage.jst.go.jp/article/tasteandsmell/7/1/7_KJ00002391769/_article/-char/ja/
- Haze S, et al. “2-Nonenal newly found in human body odor tends to increase with aging.” J Invest Dermatol. 2001;116(4):520-4.(PMID 11286617。抄録のみ確認) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11286617/
- Baker LB, Wolfe AS. “Physiological mechanisms determining eccrine sweat composition.” Eur J Appl Physiol. 2020(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7125257/
- 医薬品医療機器等法(昭和35年法律第145号)第2条 — e-Gov法令API https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=335AC0000000145;article=第二条
- 医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5 — e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205
- 平成23年7月21日 薬食発0721第1号「化粧品の効能の範囲の改正について」別表第1 — 厚生労働省法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7518&dataType=1&pageNo=1
- Minds「形成外科診療ガイドライン1 2021年版」(腋臭症診療ガイドラインを第Ⅶ編に収載。存在と構成のみ確認) https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00659/
この記事は出典の確認にもとづいて書いています。編集部が自分で実測しているのは東京のジム2,000店超の料金・設備データで、ニオイと香りの領域では実測をしていません。